勘定科目内訳明細書機能 Webマニュアル

multibook の「勘定科目内訳明細書」機能は、貸借対照表の勘定科目残高をさらに詳しく分解し、銀行口座や請求書番号などの単位で内訳を表示する仕組みです。例えば、預金は口座別、売掛金は請求書番号別に残高を集計し、法人税申告や監査で求められる資料をワンクリックで作成できます。

multibook の「勘定科目内訳明細書」機能は、貸借対照表の勘定科目残高をさらに詳しく分解し、銀行口座や請求書番号などの単位で内訳を表示する仕組みです。例えば、預金は口座別、売掛金は請求書番号別に残高を集計し、法人税申告や監査で求められる資料をワンクリックで作成できます。7種類の内訳パターンが用意されており、固定資産や在庫など補助簿が存在する勘定科目を除き、残高と明細の中間単位が無い科目は総勘定元帳と同じフォーマットで扱われます。

現場の担当者は、従来は月次決算のたびに総勘定元帳から勘定科目ごとの明細をダウンロードし、銀行口座や取引先別にシートを貼り付けて整理していました。対象科目が十数種類に及ぶ場合、単純作業に毎月2時間近く費やしていたという課題がありました。新機能では科目ごとにパターンを設定しておけば、対象期間を指定しクリックするだけで各内訳明細書を出力できるため、大幅な時間短縮と内部統制の強化が実現します。

 

内訳パターンの種類

勘定科目属性に応じて次の7種類の内訳パターンが用意されています。パターンごとに割り当て可能な勘定科目と表示される内訳単位が異なります。

内訳パターン 対象となる勘定科目例 表示内容の概要
CASH 現金 勘定区分4 Cash に割り当てられた勘定科目で、取引通貨・会社通貨それぞれの残高を表示します。
BANK 預金 勘定区分5 Bank の勘定科目に割り当てられ、取引通貨・会社通貨の残高を表示します。
AR CLEAR 売掛金・前受金 勘定区分2 AR の勘定科目に割り当てられ、未消込明細(Invoice)単位で残高を表示します。取引先単位の内訳としたい場合は「Biz Partner」を選択します。
AP CLEAR 買掛金・前払金 勘定区分3 AP の勘定科目に割り当てられ、未消込明細を表示します。取引先単位の内訳を希望する場合は「Biz Partner」を選択します。
GL CLEAR 源泉税等の仮勘定 勘定区分9 GL 消込の勘定科目に割り当てられ、未消込明細を表示します。
D Spare1 借入金など D予備1の値別に残高を表示します。契約番号や案件番号をD予備1に設定して会計伝票入力時に指定します。
Biz Partner 売掛金や買掛金の取引先別内訳 内訳として取引先別に残高を表示します。

準備

勘定科目内訳明細書を出力する前に、内訳パターンに応じた表示項目や勘定科目マスターを設定する必要があります。

ACGL650 勘定科目内訳明細書表示項目設定

債権消込・債務消込・GL消込のパターンでは、明細書に表示する項目(債権・債務・GL消込明細の各項目)を事前に定義します。ACGL650画面で一覧表示項目を選択・登録し、後述する勘定科目マスターで設定する際に指定します。

MAAC180/MAAC190 勘定科目/勘定科目一括登録

勘定科目マスターでは、各勘定科目に対して内訳パターンの選択と各種設定を行います。例えば売掛金勘定なら「AR CLEAR」、買掛金勘定なら「AP CLEAR」を割り当てます。また、取引通貨残高表示を有効にする場合は勘定科目マスタの通貨別残高保持区分を「保持する」に設定します。取引先合計行表示を有効にする場合は並び順1を「取引先」に設定する必要があります。

勘定科目を一括で登録する場合はMAAC190画面を使用し、ACGL650で設定した表示項目設定と組み合わせて内訳パターンを指定します。

勘定科目内訳明細書の出力(ACGL660)

月次仕訳明細が2,000件を超える場合はオンライン実行ができないため、バックグラウンド実行に切り替えてください。明細件数が10万件を超える場合は内訳パターンを一つずつ選択し、バックグラウンド実行することが推奨されます。

現金・銀行の内訳明細書を出力する場合は勘定科目名に該当するもの(例:現金勘定、預金勘定)を指定します。一部の勘定科目のみ出力する場合は、該当の勘定科目と該当パターンの両方を選択してください。残高がゼロの勘定科目も出力対象となります。

ACGL660画面では、会社・年月・元帳を指定し、出力対象とする内訳パターンにチェックを入れます。必要に応じて特定の勘定科目や出力言語を選択できます。すべての設定が完了したら「実行」または「バックグラウンド実行」をクリックすると内訳明細書が出力されます。

出力条件

内訳明細書の出力条件と必須項目は以下の通りです。

項目 設定内容 必須区分
年月 対象月を指定します 必須
元帳 複数の元帳を持つ場合に選択します 最低1つ必須
内訳パターン 通常は「全て」を選択しますが再出力や特定の勘定科目のみ出力する場合はパターンを絞り込めます。現金勘定・銀行勘定は勘定科目名称に相当する名称を指定し、その名称で明細書に表示されます。 最低1つ必須
勘定科目 特定勘定科目のみ出力する場合に指定します。指定するときは対応する内訳パターンも選択します。 任意
言語 明細書の出力言語を指定します。 必須

出力例

以下に主要な内訳パターンの出力例を示します。明細書はExcelファイルとして出力され、勘定科目ごとにシートが分かれます。

現金・預金(CASH/BANK)

現金や預金の内訳明細書は固定フォーマットで出力されます。口座ごとに勘定科目が登録されている前提で、1シートに現金または預金の内訳が表示されます。取引通貨残高表示を選択した勘定科目では外貨建の残高も表示されます。

債権消込(AR CLEAR)

債権消込パターンでは、ACGL650で指定した表示項目設定に基づき、取引先別・Invoice別の明細を表示します。勘定科目ごとにシートが分かれ、取引先合計行表示を有効にした場合は各取引先の合計行が表示されます。

その他のパターン

  • 債務消込(AP CLEAR) – 買掛金や前払金などの勘定科目を対象とし、未消込明細を表示します。取引先合計行表示を有効にすると各取引先の合計行が出力されます。

  • GL 消込(GL CLEAR) – 源泉税等の仮勘定など、GL消込の勘定科目を対象に未消込明細を表示します。

  • D 予備1 – 借入金のように契約番号別に内訳を管理したい場合に使用します。D予備1の項目名はMAAC300で設定した名称がそのまま見出しとして表示されます。

  • 取引先(Biz Partner) – 売掛金や買掛金の明細を取引先別に集計したい場合に使用します。固定フォーマットで出力され、取引通貨残高表示を有効にすると外貨建残高も併せて表示されます。

補足事項

フィリピンのCAS要件に対応する場合、帳簿類に会社住所・会社TIN・出力実行ユーザー・出力システム情報を出力する必要があります。会社マスタのフィリピンタブで各項目の表示設定を行うと、勘定科目内訳明細書にそれぞれの情報が反映されます。

おわりに

「勘定科目内訳明細書」機能を利用することで、月次決算の単純作業に費やす時間を大幅に短縮でき、担当者は数値の入力作業から分析・説明といった付加価値の高い業務へとシフトできます。わずかなクリックで各種明細書を出力できるため、作業時間が大きく削減されただけでなく、内部統制の強化や属人化リスクの低減にもつながったという事例が報告されています。内訳パターンの設定や準備を適切に行い、効率的な決算業務に役立ててください。